カノジョの彼の、冷めたキス


「すごく嬉しい」

渡瀬くんに笑いかけながら、彼の首の後ろに両腕を伸ばしてぎゅっと抱きつく。


「渡瀬くん、大好き」

耳元でささやくと、渡瀬くんがあたしを同じ強さで抱きしめ返してから軽く押し戻した。


「これは、いい返事をもらったと受け止めていい?」

「うん、もちろん」

笑顔で頷くあたしに、渡瀬くんがニヤリと何か企むように笑いかけてくる。


「じゃぁ、ここに穂花からちゃんと正式に返事して」

渡瀬くんが悪戯っぽく瞳を揺らしながら、自分の唇に人差し指をあてる。


「正式な返事……?」


その仕草は、キスしろってことだよね……

反射的に頬を染めたあたしを、渡瀬くんが真っ直ぐに見つめてくる。


「俺と一緒に住んでくれる?」

あたしはその言葉に小さく頷くと、渡瀬くんの唇にそっと自分のそれを重ねた。

これまで何度もキスは交わしてきているけど……

改まってするキスは結婚式の誓いみたいで、いつも以上にドキドキとした。


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