カノジョの彼の、冷めたキス


見てはいけないものを見てしまったような気がする。


「孝哉……」

皆藤さんが渡瀬くんを呼ぶ、甘い声が聞こえてきて、思わずゴクリと喉が鳴る。

決して覗き見したいわけではないけれど、カップルの顔が見えた瞬間から、あたしの視線は彼らに釘付けになってしまっていた。

あたしが見ているとは知らない渡瀬くんが、皆藤さんのブラウスのボタンをひとつ、ふたつと外して、細い首や胸元に口付ける。


「だ、め……」

それに対して拒絶の言葉を口にする皆藤さんだったけど、その響きは甘くてあまり嫌がっているようには思えなかった。

ゴクリと思わず生唾を飲み込んだあたしの眼下で、渡瀬くんが皆藤さんのタイトスカートの中に手を差し込む。


「た、かや……」

皆藤さんが色っぽく表情を歪めながら目を閉じたとき、ふたりの中を引き裂くように誰かのスマホが大きな着信音を鳴らした。



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