カノジョの彼の、冷めたキス


一瞬あたしのスマホかと思って心臓が止まりそうになったけど、下から「ちょっとごめん……」という皆藤さんの声が聞こえてきてほっとする。

渡瀬くんから離れた皆藤さんは、かけてきた相手といくつか言葉を交わすと電話を切った。


「ごめん。あたし、もう行かなきゃ」

「あぁ」

皆藤さんの言葉に、渡瀬くんが短い相槌を打つ。

さっきまで、あたしの目の前で濃厚なラブシーンを繰り広げていたふたりなのに、その会話も態度も拍子抜けするくらいあっさりとしているから吃驚した。

スマホを握りしめてあたりを警戒するようにしながら、皆藤さんがひとりで先に非常階段のドアを出て行く。

皆藤さんがいなくなると、渡瀬くんはつい数分前まで彼女を押し付けていた壁に背をつけて前髪をかきあげた。

額に手をあてて上を見た渡瀬くんが、ちらっとあたしが隠れているあたりへと視線を向ける。



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