カノジョの彼の、冷めたキス
「斉木さん、そんな落ち込まんとき。渡瀬くんもそんな怒らんでいいやん。軽く誘ったん、俺やし」
シュンと俯くと、高下さんが笑いながら慰めの言葉をかけてくれる。
だけど、渡瀬くんは先輩である高下さんを遠慮なく睨んだ。
「高下さんは黙っててください。俺は斉木さんと話してるんで」
冷たい口調で退けられて、高下さんが肩を竦めながら口を閉ざす。
「で?本当に遊んで帰るつもり?」
見下ろす渡瀬くんの目は、はっきりとあたしを責めていた。
「いえ。予定通りに帰ります」
小さな声でそう告げると、渡瀬くんの表情がほんの少し和らいだ。
と、同時に高下さんが残念そうに息を吐くのがわかる。
「帰っちゃうんやー。残念」
「すみません」
謝ったら、なぜか渡瀬くんに無言で睨まれた。
え、謝るのもダメ……?