カノジョの彼の、冷めたキス


「まぁ、しゃーないよな。またプライベートで来ることがあったら声かけて」

「ありがとうございます」


お礼を言うあたしのことを、渡瀬くんはなおも睨み続ける。

渡瀬くんの反応にビクビクしながらも一緒に大阪支社の人たちに挨拶をして、一緒に居酒屋を出た。

先に居酒屋の出口を出た渡瀬くんが、遅れてついて行くあたしを振り返って立ち止まる。

少し眉間にしわを寄せている渡瀬くんは、まだあたしに腹を立てているらしい。


「あの、ごめんなさい……」

「何が?」

問い返してくる渡瀬くんの声は低くて不機嫌そうだ。


「あの、観光のこと。本気で行くつもりだったわけじゃなくて……話の流れでついそんな空気になってしまったというか……」

何を言っても言い訳でしかない、か。

話しながら少しずつ目線が下にそれていく。

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