カノジョの彼の、冷めたキス
あたしが言葉を詰まらせたタイミングで、渡瀬くんが舌打ちをした。
余計なこと言ったせいで、余計にイラつかせたのかも。
ビクッと肩を揺らして縮こまる。
そんなあたしに、渡瀬くんがジリジリと近づいてきた。
あ、怒られる……
そう思って肩を窄める。
だけど、しばらく待っても渡瀬くんの怒声は振ってこなくて、代わりにため息とともに手首をつかまれた。
渡瀬くんのひんやりとした指先があたしの身体を冷やす。
恐る恐る顔を上げたら、渡瀬くんが呆れ顔であたしを見下ろしていた。
「もういい。目ぇ離した俺も悪い」
「え?」
渡瀬くんの言葉に、ドクンと胸が高鳴る。
「行くぞ」
渡瀬くんはジッと顔を見上げたあたしから目をそらすと、そのままあたしの手を引くようにして歩き始めた。