カノジョの彼の、冷めたキス
◇
「えーっと。それはどういう意味でしょうか……」
今受けた説明のせいで思考が回らなくなったあたしに、ホテルのフロントの女性が穏やかに微笑みかけてくる。
「ですから、ダブルのお部屋に2名様のご宿泊でよろしいでしょうか?と」
「ダブル……シングル2部屋の間違いじゃないですか?」
「いえ。こちらでは、斉木様のお名前で、ダブルのお部屋を2名様のご利用と承っておりますが」
そばにあるパソコン画面を確認して、フロントの女性が微笑んでくる。
その笑顔を見つめ返しながら、背中にダラダラと冷や汗が流れた。
「何?なんかトラブル?」
あたしがチェックインに手間取っているのに気付いた渡瀬くんが、ロビーのソファーから立ち上がって歩み寄ってくる。
「いや、その、なんと言いますか……」
フロントのお姉さんの視線を感じて言葉を濁らせる。