カノジョの彼の、冷めたキス
「予約通り、押さえてもらってる部屋に2名でチェックインお願いします」
「え?」
当然渡瀬くんがひとりで泊まる手続きを始めるのだと思っていたら、そんな言葉が聞こえてきたからついスマホを手から落としそうになった。
「ではこちらにお名前をお願いします」
両手でスマホを握り直して顔を上げると、渡瀬くんがフロントのお姉さんに差し出された用紙に何か記入している。
「ちょっと待って、渡瀬くん……」
記入を終えた渡瀬くんが、慌てふためくあたしをゆっくりと振り返る。
「今から探すのも面倒だろ。もう、ここでいい」
「で、でも……」
「お前のミスなんだから、責任とれ」
責任とれって……どんなふうに?
真顔でそう言ってくる渡瀬くんの言葉の意味を深読みしてしまってひとりで顔を火照らせる。