【短】繰り返しの雨宿り


「いや、死んだよ」

「え?」




 しかし、男性は淋しそうな顔をしてから呟く。




「タイミングが悪かったのさ。仕事で大きな失敗しちまって。クビにはならなかったが、会社で肩身の狭い思いをすることになってな。酷い扱いを受けていたみたいだ」




 どうしてか、胸が苦しい。




「その直後、彼氏が浮気していることを知ってさ。十年近く付き合ってきた彼氏に別れ話をされたんだ」




 悪いことが重なった。
 それ以上を聞き返すのが怖くなって、私は黙っていた。




「――自殺。そりゃあ、ショックだったよ。何年も、何十年も引きずってさ。俺は結婚どころか恋人も出来ないまま……一生を終わらせちまったよ」

「え?」

「享年九十二歳だってよ。長生きしただろ?」

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