秘密の恋 〜社長に恋して〜
「…ああ。プライベートの携帯を忘れたんだ。机の中に。」
少し、間があったように感じた瑞穂だったが、
「そうでしたか。わざわざお疲れ様です。言って下さったらお届けに…。いえ、なんでもありません。」
そこまでいうと、瑞穂はニコッと作り笑いを浮かべた。

(- 冷たい。)

その頬に感じた感覚に、瑞穂は空を見上げた。
ポツポツと振り出した雨は、瑞穂の頬を濡らした。
「社長!急いで中へ。濡れます!」
瑞穂は慌てて言った。

「お前だって濡れているだろ?」
そう言って由幸は瑞穂の頬に付いた水滴にそっと触れた。

瑞穂は触れられた由幸の手の冷たさに、背筋にゾクっとした衝撃が走った。

周りのキャーと言う声と共に、雨がザーっと勢いよく地面を濡らした。

「社長!早く。」
瑞穂は由幸をエントランスに押し込むと、
「傘もタオルも社長室の入り口のクローゼットの中に入っています。そちらをお使いください。早くしないと、車も駐禁取られます!」
瑞穂は、路上に停まったハザードランプの灯ったベンツを目でやった。

「おい…!おまえは…。」
その声を遮るように、
「お疲れ様です。失礼いたします。」
瑞穂は頭を下げると、踵を返して土砂降りの雨に身を投げた。

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