秘密の恋 〜社長に恋して〜
エレベータでエントランスまで降りると、さっきよりどんよりと澱んだ空を瑞穂は見上げた。
今にも、ポツポツと落ちてきそうな空をただ見上げた。
自分の瞳からも、零れ落ちそうになるのをなんとか耐えた。


「笠井?お前こんなところで何してる?」
突然のその声に、完全に気を抜いていた瑞穂はビクっとして固まった。

コツコツと後ろから少しずつ近づく足音に、瑞穂は目を向けられなかった。
なんとか、近づく足音と共に、いつもの秘書の仮面を引っ張り出し、真後ろに音を聞くと同時に振り返った。

「お疲れ様です。社長こそどうされたんですか?」
にこやかな微笑みを湛え社長を見上げた。
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