秘密の恋 〜社長に恋して〜
「初めまして。本日より、社長の秘書に配属になりました笠井瑞穂です。」
瑞穂はドキドキして顔を上げた。

「ああ、高倉由幸だ。よろしく。」
そこには、あの時の面影はなく、キリッとし、少し冷徹な瞳の由幸の姿があった。
この年、社長に就任したばかりの由幸は仕事に没頭していた。

(- あー、この人は私なんて覚えてるわけない。)

そして、その後に知ったストレスの発散と言う名の女遊び。

『なんですか、社長。今日はご機嫌斜めですね。』
1年半を過ぎた頃から、だいぶ由幸は瑞穂に気を許すようになった。

『昨日の女はハズレだったんだよ…。』

『また、そんなことで…。』

『そんな事とはなんだ。俺の仕事に影響が出るぞ。』

『はい、はい。』

『また、食事だけして、一人BARでやけ酒ですか?』

『悪いか?お前が相手してくれる?』

『セクハラです。社長。』

『いいんだよ、あのホテルのBARのマスターは知り合いだし、カウンターでゆっくり話をするのも俺にとってはストレス発散なんだよ。』

『じゃあ、その発散方法だけにすれば?女で発散せずに。』

毎回、繰り返されるこの会話。

仕事になれば厳しく、常にリーダーシップを発揮し、社員を引っ張っていく。
しかし、あの時のように、根はやさしく、思いやりがある。
それに気づくのには時間はかからなかった。
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