【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1


「ちょっと?相馬?」


車を運転していると、横から、声がする。


甘い、においと共に聞こえる声ではなく、


優しい声が。


「信号、青だよ?」


隣に座る沙耶は、俺のスーツを着ている。


あまりにもひどい格好だったので、学校のトイレで着替えさせたのだ。


ブカブカなジャケットに腕を通した沙耶は、俺の顔を見ると、心配そうな顔をする。


「……顔色、真っ青だけど」


思い出したくない過去が、


俺の傷を抉る。


「……何でもない」


……誤魔化せたと思ってた。


どんな女だって、騙されてくれた。


けど、沙耶は……


前世と同じで、聡い娘だった。

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