【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
十年前のあの事件が起こる前……
『あんたが生まれてきたから……っ!あの人が私を愛さなくなったのは、そのせいよ!』
理不尽な言葉。
愛してほしかった人から、浴びせられた言葉。
『あんたなんて、生まれてこなければ良かったのに……っ!どうして!?どうしてよ!私の何がいけなかったの!?どうして、私を置いていくの!はる!!』
気が狂ったように、否、気の狂った母さんは、俺にそう言った後、父さんと重なったのか、肩をすごい力で掴んで揺さぶってきた。
『ねぇ、はる?私を捨てないでよ。ねぇ?』
“俺は父さんじゃない”
……その一言が、どうしてもでなかった。
『どうしてよぉ……っ!!』
母さんをおいて、出ていった父さんの行き先は他の女のところではない。
病院だ。
病院なんだ。
母さんを治そうとしているんだ。
重圧に負けて、弱りきっている母さんを、父さんは……父さんは、“愛しているから”離れたんだ。
―自分が側にいれば、彼女は死を選ぶ―
……そう言って。
『はるぅ……』
言わなくちゃ、言わなくちゃ。
幼心に、そう思ってた。
崩れ落ちる、母親を見ながら、そう思っていたんだ。