【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
夏翠の間抜けな声が漏れる。
「だから、夏翠さんのこともよく知ってるの。噂で聞く"滅帝"と、父さんから聞く"滅帝"じゃ、違いすぎて。まぁ、顔合わせた感じ、どっちもこの人みたいだけど」
沙耶の容赦ない物言いに、薫は目をぱちくりとした。
「でね、焔棠雪…"戮帝"だっけ?父さん、その人にすごく可愛がられているんだって。だから、今回のことも全て父さんが絡んでいると思う。じゃなかったら、普通に言わないと思うな。"転入生に気をかけろ"なんて」
「……言われたの?」
「んー、人伝で。父さん、そんな感じの人だし。何より、私、母さんの見た目で、父さんの性格なんだよね。大抵、全く同じ考え方なの。それがいいのか、悪いのかは人によるけど、とにかく面倒臭いことが嫌いなんだよね。それを知っている父さんが言うんだから、多分、夏翠さんのお父様とも知り合いなんだと思う」
残念なことに、と言っていいか分からないが、沙耶はにこにこと夏翠に向かって微笑んでいる。
「あなたが考えていることは、分かるよ。私も、昔大切な人を亡くしたから。でもさ、人生って楽しまなきゃ損じゃん?」
ポジティブに行こうよ、そう言った沙耶は、柚香を振り返る。
「柚香も悪い子じゃないよ。ハブられている私と一緒にいるんだもん。人気者なのにさ」
「ハブられているって……沙耶はなんにも悪くないでしょ?」
「そうねぇ、何にもしてないつもりなんだけど。まぁ、柚香と真姫がいるならいっかとか思っているせいかも」
頭を掻きながら、片手を再び、夏翠に差し出す沙耶。
「……なんで、私なの?」
手を握ろうとして問いた夏翠。
「父様に頼まれたから?」
夏翠のことを心配する、夏翠の父親の直樹さんは、妻と娘が大好きな人だ。
本当にこの人が姫宮のトップなんだろうかと、たまに本気で疑いたくなる。
そんな直樹さんに一番似ているはずの夏翠は、人前では弱い子供のようになってしまう。
大方、小さい頃からいじめられたりしてきたのが原因だろうが……
沙耶は、悩んだ後で。
落ちようとしていた夏翠の手を握った。
そして、弾けるような笑顔で、
「理由なんかない!」
そう、言った。