華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
なのに彼女の頭の中では、私とセイディーレがあんなことやこんなことをしているのかと思うと、恥ずかしすぎて叫びたくなる。どんな羞恥プレイよ!

鼻歌を歌いながら去っていく彼女の姿を、私は茹でタコみたいになっているだろう顔でじとっと睨んでいた。


 *


ひとりになった部屋で、窓の外と時計を交互に見るという動作を何度繰り返しただろう。

もうすぐ十一時になるというのに、セイディーレはまだ帰ってこない。

どうしたんだろう、なにかあったのかな。

城のほうは大丈夫なんだろうか。ハーメイデンの皆は、無事帰れた……?

心配と不安は増すばかり。まったく眠くならない眼で、寝静まった夜の景色を眺めながらため息をついた、そのとき。

馬が駆けてくるような音が聞こえたかと思うと、庭園の向こうからティルクに乗ったセイディーレが現れた。

よかった、帰ってきた……!

一気に安堵して、肩の力が抜ける。どうしようもなく彼に会いたくなって、身体は無意識にドアのほうへと向かっていた。

顔だけでも見ないと、眠れる気がしない。

廊下に出て、ドアを背にしてしばらく待っていると、階段を上ってくる足音が聞こえてくる。そして制帽を手にした彼の姿が見えた瞬間、私は笑顔で口を開いた。

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