華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
……それでも、セイディーレへの想いはまったく色褪せることがない。フレイヴ王太子を彼よりも愛せる自信など、まるでないのだ。


十二年前のことを、お父様に問いただしてみようかと思ったものの、思いのほかすぐに結婚に向けて話が進められ始めてしまい、タイミングを逃してしまった。

真実を知ったところで、私が結婚するという運命は変えられない。

そう実感すると、セイディーレとのことはもう胸の中に閉じ込めておいたほうがいいような気がして、結局当時のことは曖昧なままだ。

彼との愛は、夢。そう自分に言い聞かせ、私はソファから立ち上がった。

すると、ちょうどコンコンとドアがノックされ、今日も綺麗な姉様が顔を覗かせる。


「リルーナ、そろそろ行くわよ」

「えぇ」


ついに王太子様のお目にかかるときがやってきたか、と気を引きしめて返事をし、部屋をあとにした。

顔合わせを行う広間に向かう最中、姉様はなぜか浮かない顔をしていて口数も少なく、様子がおかしいことに私はすぐ気づいた。

どうしたんだろう。今ブルーになるのは私のほうのはずなのに。

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