華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
7─真実─
幻の王太子
* * *
もうすぐ、婚約式が始まる。
ぼんやりと窓の外に向けていた目をティーカップに戻し、かけがえのない宝物が詰まった箱を閉じるように、思い出していた約一年前の記憶に蓋をした。
唯一、セイディーレのことを打ち明けていたのは世話係のソルレだけ。
姉様にも、婚約者以外の人を愛してしまっただなんてことは言えなかった。
婚約直前になってもなお想いを捨てきれていない私に、きっとソルレは呆れたことだろう。
それでも彼女は、この部屋を出ていく前、『フレイヴ殿下が、姫様の想いを塗り変えてくださることを祈っております』と、切なげに微笑んで励ましてくれた。
そうなれたらどんなにいいことか、と私も思う。
セイディーレと別れてから、私はまた城の中から出られない生活に戻った。あれだけの騒ぎになってしまったのだ、そうなって当然だろう。
山賊はセイディーレたちによって無事捕らえられたと、お父様から聞いている。以前より山賊の規模も小さくなり、ほぼ権力は持たなくなったらしい。
でも、またいつ狙われるかわからない。もう皆に迷惑はかけたくなくて、自分でも外に出たいとは思わなくなっていた。