華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
地面に両手と両膝をつくセアリエは、フレイヴの攻撃によって剣を落としてしまったらしい。

余裕の笑みを浮かべるフレイヴもものすごくカッコ良くて、本当はきゃーきゃー言いたいくらいなのだけど、人前だしなによりセアリエに申し訳ないので留めておく。

蘇った黒の騎士は、興奮冷めやらぬ私のもとへ歩み寄ってくる。そしてぐっと肩を抱き寄せ、セアリエに向けてこう言い放った。


「ということで、妻は渡しません」


そう、なぜか“試合に勝ったほうはリルーナとデートができる”という権利を、いつの間にか懸けることになっていたのだから困ってしまう。

ちなみに、これまでその権利を勝ち取ったのはフレイヴだけ。セアリエだってハーメイデン最強だと言われるくらいの腕はあるのに、フレイヴがすごすぎるのだ。

片手をこちらに伸ばして、「姫様ぁ~!」と叫ぶセアリエをよそに、フレイヴは私の肩を抱いたままさっさと歩き出した。

笑い声が響く賑やかな練習場から遠ざかりながら、私は呆れた笑いをこぼす。

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