華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「あの、腰、抜けちゃったみたいで……」


情けない声で言うと、彼の口から心底呆れたようなため息がこぼれた。


「まったく……世話の焼ける姫だ」


ボソッと呟いた彼は、こちらに引き返してくる。そして私のすぐそばにしゃがみ、なぜかドレスのスカートに手を伸ばしてくる。

ギョッとする私に構わず膝を立たせた彼は、その下と背中に腕を回し、ひょいっと私の身体を持ち上げた。


「ひゃっ!?」


小さな悲鳴を漏らして、反射的に彼の肩にしがみつく。目の前にはシャープな顎のラインが見えて、心臓が飛び跳ねた。

こんなふうに抱きかかえられたことなんてない。すっごくドキドキしてしまう……!

密着感にどぎまぎする私を軽々と抱えたまま、セイディーレはメーラのほうを向いて突然問いかける。


「名前は?」

「え? っと、リルーナ……」


なぜ今名前を聞くの?と思いながらもとりあえず答えると、彼はこんなことを言う。


「雌馬か。リルーナ、しゃがめ」


命令されたものの名前が違って、メーラはぽかんとしているように見える。

まさか、名前を聞いたのは私じゃなかった?

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