華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「リルーナは私です! その子はメーラ!」


慌てて訂正すると、セイディーレは一瞬眉をひそめ、「なんだ、紛らわしい」とぼやく。

いやいや、あなたの聞き方に問題が!と突っ込みたいところだけど、勘違いをしてしまって恥ずかしいことに変わりはない。

熱が集まる顔を隠すように、私は彼の腕の中で縮まった。

セイディーレがもう一度ちゃんと命令すると、メーラは足を折って身体を低くする。その背中に、私をふわりと乗せてくれた。

言葉や態度は冷たくきついけれど、仕草は優しいんだな……。「主人を落とすなよ」と言いながら、メーラの身体を撫でる手つきも同じく。

アルツ草が入った大事な籠も鞍につけてくれる彼を眺めていると、ふいに上げられたエメラルドグリーンの瞳と視線がぶつかる。

見つめ合い、「リルーナ」と初めて名前を呼ばれ、なぜかドキリと胸が鳴った。


「ちゃんとついてこいよ。見失ったら置いていくからな」

「っ、わかりました……」


うぅ、やっぱり容赦ない。

優しさは十パーセント未満だな、と観察結果を出した私は、ひらりと馬に飛び乗ってすぐに走りだす彼のあとに続いた。


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