華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
クラマインに泊めてくれるような知り合いなんているはずもないし……と悩んでいると、はっと気づいた。
いるじゃない、ひとりだけ。今日知り合った人が、目の前に。
ここはもう、この人を頼るしかないんじゃ……。
ありえない頼みだと思いながらも、ほかに術が思いつかず、私は上目遣いでセイディーレ閣下を見つめて口を開く。
「あの、ちなみにですけど、閣下はどちらにお住まいで?」
遠慮がちに尋ねると、彼の前髪の隙間からわずかに見える整った眉毛が、ピクリと動いた。
「……まさかとは思うが、俺の部屋に泊まろうとしてるわけじゃないだろうな?」
細められた目で訝しげに見据えられ、ギクリとする私はぎこちない笑みを浮かべてみる。
「やっぱりダメですか?」
「当たり前だ!」
閣下は少し怒ったように言い、私は“だよね”と心の中で同意しながら苦笑した。
心底呆れたようにため息をついた彼は、少しだけ声のボリュームを抑えて言う。
「俺はクラマインの城内に住んでいる。お前も、王族だとバレたら厄介なことになるだろうが」
「えぇ、もっともです……」
いるじゃない、ひとりだけ。今日知り合った人が、目の前に。
ここはもう、この人を頼るしかないんじゃ……。
ありえない頼みだと思いながらも、ほかに術が思いつかず、私は上目遣いでセイディーレ閣下を見つめて口を開く。
「あの、ちなみにですけど、閣下はどちらにお住まいで?」
遠慮がちに尋ねると、彼の前髪の隙間からわずかに見える整った眉毛が、ピクリと動いた。
「……まさかとは思うが、俺の部屋に泊まろうとしてるわけじゃないだろうな?」
細められた目で訝しげに見据えられ、ギクリとする私はぎこちない笑みを浮かべてみる。
「やっぱりダメですか?」
「当たり前だ!」
閣下は少し怒ったように言い、私は“だよね”と心の中で同意しながら苦笑した。
心底呆れたようにため息をついた彼は、少しだけ声のボリュームを抑えて言う。
「俺はクラマインの城内に住んでいる。お前も、王族だとバレたら厄介なことになるだろうが」
「えぇ、もっともです……」