華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
なんだろう。すごく冷たい人なのだけど、その奥にあるものを覗いてみたいというか。もっと、彼のことを知りたいのだ。

好奇心が湧いてきて、私は閣下を遠慮がちに見上げる。


「閣下がご迷惑でなければ……」

「迷惑だ」


すぐさま返された言葉が、グサッと心臓に突き刺さった。わかってはいたけど、やっぱり悲しい……。

しくしくと泣きたい気持ちになっていると、マジルヴァさんは私の背中に手を当て、慰めるように言う。


「こいつは照れとるだけなんだよ。ほら、さっさと座れ!」


マジルヴァさんは閣下の腕をぐいっと引っ張り、窓際にあった椅子に強引に座らせてしまった。

い、いいのかな、ものすごく不機嫌そうだけど……。

それでも閣下は渋々残ることにしたらしく、気だるげに制帽を取った。

さらりとした黒髪が露わになる。毛先は無造作に流れていて、前髪は目にかかるくらいの長さ。

制帽を取るとまた雰囲気が違うけれど、とにかくカッコいいことに変わりはない。

長い足を組む姿も絵になるな、と目を離せずにいる私に、マジルヴァさんはテーブルのほうの椅子に座るよう促してくれた。

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