華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「今、ちょうど飯にしようと思ってたところでな。一緒に食べよう。薬を調合するには一晩かかるから、ゆっくりしていくといい」


彼はそう言うと、意気揚々と食事の準備を始める。

そういえば、さっきから美味しそうな匂いがしているのよね。この奥にあるのがキッチンなのかな。

調理器具と、薬の調合に使いそうな器具がたくさん置かれているそちらの空間を、首を伸ばして観察していると、ぐうぅ、とお腹の虫が盛大に鳴いた。

きゃー、恥ずかしい! お昼からなにも食べていないから……!

慌ててお腹を押さえると、こちらを見た閣下と目が合う。彼はぷっと吹き出し、整った顔が一瞬ほころんだ。

無防備な笑みをかいま見た瞬間、なぜか胸がドキンと音を立てる。


「反応良すぎ」


顎に手を当てる彼から、そんなひと言がぽつりとこぼれ、私はかぁっと熱くなる顔を俯かせた。あぁ、穴があったら入りたい……。

でも、無愛想なこの人の笑ったところ、初めて見た。ちゃんと、人間らしい表情もできるんじゃない。

恥ずかしいけれど、なんだか嬉しくもあり、私の胸は少しざわめいていた。




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