華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
色褪せ、ボロボロになったその本はまるで魔術書のようで、面白くてなんとなく見ていたのだけど、今になってその雑学が役立つとは思わなかった。

私の話を聞いた姉様は、希望の光を見つけたように表情を明るくし、私の手を両手でぎゅっと握る。


「本当に!? すごいじゃないリルーナ!」

「何年ここで守られてると思ってるの?」


飛び跳ねそうな勢いで喜ぶ彼女に、私はしたり顔で笑ってみせた。

城にいる間、本を読む時間は嫌と言うほどあったのだ、知識だけはある。

姉様は、普段はとても落ち着いているものの、実はとてもチャーミングで、私や家族の前では素直に感情を表す人だ。今も、さっきまでのショックはどこへやら、みるみる元気を取り戻している。


「じゃあ、さっそくその書物を探しましょう! 兵にも伝えてすぐに準備を……」

「待って、姉様」


意気込む彼女の腕にしがみつき、私はしっかりとした口調で言う。ついさっき決意したことを。


「書物を探す時間がもったいないでしょ。私ひとりで行くわ」


その瞬間、姉様のアンバー色の瞳が大きく見開かれた。

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