アフタースクールラヴストーリー
僕は暫くの間、会議室での待機を命じられた。
校長先生は一旦職員室に戻り、会議室には僕一人となっていた。
誰もいない部屋の中、僕は自分の惨めさを痛感していた。
三年越しの想いが実って正規の教員となり、生徒としっかり向き合える教師になろうと頑張ってきたつもりだった。
でも実際は、非常勤の頃と何一つ変わっていない。
生徒の言葉から逃げ、挙句一人の女の子に一生の傷を与えてしまうかもしれない。
これでは前の学校でやったことの繰り返しだ。
「くそっ……」
僕が生徒から告白されたのは、副崎が初めてではない。
僕は前にも一人の生徒から告白を受けている。
それがこの前水族館で会った女性、竹下呉葉である。
呉葉と僕は何か特別な繋がりがあったわけではなかったが、授業の合間や放課後によく話していた。
僕は非常勤講師だったので部活の顧問は持っていなかったし、呉葉も部活動には所属していなかったため、二人の帰宅時間が重なることも少なくなかった。
それ故に、タイミングが合った時は一緒に帰ることもあった。
僕が前の学校で、一番仲の良かった生徒が彼女だったのは間違いない。
告白されたのは、今年の二月。
僕は教員採用試験に合格し、四月から転勤することが決まっていた。
呉葉の受験勉強も追い込み段階に入っており、僕と帰ることも滅多になくなっていた時期のことだ。
ある日僕が帰宅しようとすると、偶然呉葉が校舎から出てくる姿を見つけた。
僕は彼女に声をかけ、久々に二人で帰ることになった――。