アフタースクールラヴストーリー
「久田先生」
「はい」
どうしようもなく頭を掻いていると、後ろから名前を呼ばれる。
振り返ると、そこにいたのは現生徒会顧問、林先生だ。
「すみません。竹本先生ったら無理矢理な頼み方をして。久田先生が厳しそうでしたら、断ってもらっても……」
悄然とした顔をする林先生。
そんな顔を見せられたら、ここは格好良く振る舞っておこうという気になってしまう。
「ああ、いえ、折角なのでやってみようと思います!」
「本当ですか? ありがとうございます。できれば久田先生にやってもらいたいと言ったのは私だったので、安心しました。一年目の先生にお願いするのもどうかという思いもあったんですけど……」
「そんな、林先生からそうやって思っていただけて光栄です」
「それなら良かったです。久田先生なら美奈と上手くやっていけると思います」
林先生は顔を綻ばせる。
「美奈が難しい子とかそういうことじゃないですよ。あの子は他の先生とも仲が良いですが、あそこまで早く打ち解けられているのは珍しくて。そう考えると、美奈が大変そうな時に久田先生なら良き相談相手になってもらえるかなと」
「そうなんですか」
入学式の日で話して以来、副崎はどの先生ともすぐに仲良くなるものだと思っていた。
だから少し意外だ。
その反面、自分の人柄が評価されているのは素直に嬉しい。
「林先生のようにできるかは分かりませんが、精一杯頑張ってみます」
「ありがとうございます。それで早速なんですが、今日の放課後に生徒会室へ顔を出してもらっても良いですか? 説明したいこともありますので」
「はい、大丈夫です」
僕が了解すると、林先生は一言お礼を述べて自分の机に戻る。
生徒会の顧問か……。
高校時代は運動部だったから、そうした活動とは無縁だった。
生徒会に立候補した友達から、選挙の時に票を入れてくれと言われて、ろくに演説も聞かずに投票した記憶くらいしかない。
中学生や高校生の頃ははっきり言って、生徒会がどんな活動をしているのかよく分からなかったし。
そんな人間が顧問になっていいのかという後ろめたさを感じるが、引き受けた以上は真摯に取り組んでみようと思う。
「よし、頑張ろう」
僕は自分に気合を入れ、今日の授業の準備に取り掛かった。