アフタースクールラヴストーリー

「で、ここまで来て話したいことって何? もうすぐ朝のSTが始まるんだけど」

迷惑そうな顔をしてちひろが言う。
その場から離れることに無我夢中だった私は、ちひろを空き教室のある廊下の端まで引っ張ってきてしまった。

「あ、あのね、なんていうか……その……」

話したいことがあるなんて苦し紛れの言い訳であったので、私はちひろの質問に対してどもってしまう。

「まさか、本当は何もないとか言うんじゃないでしょうね」
「え……、えへへ……」

私は笑って誤魔化すしかない。

「はあ……。信じらんない。ていうか、藤澤と何かあったの?」

一つ溜息をついたちひろは、私の様子を見てすぐに悩んでいることを見破った。

「いやあ……、分かる?」
「図星なのね。まあ教室入った時に、お互いに気まずそうな雰囲気が出ていたからなんとなく分かった。案の定、美奈が私を見つけるや否や話があるとか言って、焦った表情浮かべてこっちに来たしね」

ちひろは私達の教室の方を見つめて言う。

「それで腕を掴まれたと思ったら、無理矢理ここまで連れてこられたし」
「す、すみません……」
「何があったかは知らないけど、とりあえず今は藤澤と顔を合わせるのが嫌なのね」
「そう。でも……」
「仲直りは早くしたいと」
「あ……」

私の考えていることがちひろにどんどん先読みされていく。
流石ちひろといったところだが、正直ちょっと怖い……。

「後で話を聞いてあげるから、ひとまず教室に戻るよ」
「ありがとう……」

今度は私がちひろに引っ張られ、朝のSTが始まる前に教室へと入った。
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