副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「だから、面接頑張って、とだけ告げて立ち去ろうとしたんだけど、今度は君がこう言ったんだ――『あなたも、なにかあったんですか?』って。俺は顔に出るタイプじゃないと思ってたから、正直あのときは本当に驚いた」

 彼が私を抱き寄せると、私はされるがままに彼に寄り添う。

 彼がどうして? と聞くと、私は真っ直ぐに彼を見つめて、だってとても悲しい顔をしていたからと言ったらしい。

 そのことはあまり覚えていなかったけれど、そのときそう言ったなら、きっと彼がそういう表情をしていたのだと思う。

「そして君は、さっきの言葉を教えてくれたんだ。私も人に聞いた受売りなんですけどねって言っていたけれど、あのときの俺には十分すぎるぐらい心に響いて。俺は、あの日大切なものを見つけられた気がした。……明日奈、君に救われたんだ」

 甘く、どこか悲しげに呟かれた言葉が降ってきて、私は彼を見上げた。

 すると私を見下ろす彼もこちらを見つめていて、私は気恥ずかしくて睫毛を伏せる。
< 182 / 196 >

この作品をシェア

pagetop