副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「でも何日もかけて選んだだけあって、さすがのお前も文句のつけようがないだろ?」

 彼は私に視線を流すと、やはり悔しそうに眉を顰めながらも小さく頷く。

 今朝知ったのだけれど、三浦さんの両親は有名なデザイナーらしい。

 彼自身もそんな環境で育ったせいか、その人に合う洋服をコーディネートするのが得意だという。

 それで私のドレスを選んでくれることになったのだろうけど……。

 鏡に映る姿を見て、思わず息が漏れた。

 素敵すぎる彼の隣に私が並んで、それを見た人たちはどう思うのだろうか?

 ……副社長の趣味が疑われたら、どうしよう。

 考えれば考えるほど、緊張で顔が強ばった。

 すると知らぬ間にすぐ後ろにやって来ていた副社長に、顎を持って上を向かされる。

 鏡越しに映る彼は柔らかく微笑んでいて、私を安心させるように囁いた。

「そんな顔をするな。自分を信じろ」

 淡く、甘い言葉が鼓膜を擽る。

 彼がそう言うと、途端に心が軽くなるから不思議だ。いつかと同じ、まるで魔法にかけられたみたい。
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