副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「なぁ千秋、お前も完璧だと思うだろ?」

 三浦さんは煮え切らない私に痺れを切らして、副社長に問いかけた。

 口をへの字に結んだ彼は、不安げな私と視線が絡むと、諦めたように大きく息をつく。

「……似合ってるよ。本当に」

 ゆるりと表情を緩めた彼を見て、ドキリと胸が高鳴った。

 すでに黒のタキシード姿の彼。そのあまりの似合いっぷりに、私は思わず見惚れてしまう。

 ……まるで、どこかの国の王子様みたいだ。

 けれど「ほら!」とテンションを上げた三浦さんを見て、彼の眉間にはまた深く眉間にシワを刻まれる。

「お前も、俺がドレス見立てたからってそんなに膨れるなよ」

 機嫌を良くした三浦さんは、彼の肩を数回叩いた。

 それを鬱陶しそうに振り払った彼は、私を見つめて目を細める。

「恋人が他の男の選んだドレスを着てるなんて、それも選んだのがお前だなんて、最悪だ」

 冗談なのか、それとも本心か、吐き捨てるように呟いた彼は、三浦さんをジロリと睨み付けた。

「お前の口からそんな言葉が聞ける日が来るなんてな」

 お腹を抱えて笑う三浦さんを見て、彼の機嫌はより一層悪くなる。

 ことがことだけに、私は気恥ずかしくて知らないふりをした。
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