副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 彼の元へと戻ると、彼は私を見つめて侘しい笑みを浮かべた。

 そして伸びてきた長い指は、私の目元をそっと撫でる。

 なにがあったのか、彼には全てわかっているのかもしれない。

 私がその手を取り頬を寄せると、彼は安堵したように優しく目尻を垂らした。

「行こうか」

 「はい」と頷くと、私は差し出された腕に自身の腕を絡める。

 会場の大広間の大きな扉の前に立つと、彼は私を見下ろして優しく目を細めた。

 その降り注ぐような愛情に、私も応えるように身を寄せる。

「大丈夫。君は、いつもの君でいればいいよ」

 淡く、甘い声が降った。魔法をかけられて、私は絡めた腕にそっと力を込める。

「……千秋さん。私も、自分に自信が持てるように頑張ります。今はまだダメでも、いつかあなたの隣に並んでも堂々と胸を張れるような女性になれるように」

 そう呟くと、彼はこちらを見ないままクスリと笑みを零した。

 不思議に思い見上げると、彼はこちらに視線を流して慈しむような瞳を私に向ける。

 それを見て思わず胸が高鳴るけれど、私はそれを悟られないように彼に寄り添った。
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