天使と悪魔の子

「聴いてよ夕紀!」

「……どうせ席が全員近くになったんだろ。」

「ぇっ、なんでわかったの。」

昼休み、夕紀のジトっとした視線が宙に向けられる。

「こんなことがあるんだね。」

そんな調子で宙は笑う。

きっとなにかしたのだろう。

いつも通り階段でみんなで座ってご飯を食べて、こんな日常がいつまでも続いたらいいなんて淡い期待を抱いていた。

「うわー宙の弁当美味しそ…」

日和がまじまじと後ろの段からそれを覗く。

そんなことを言われたら照れてしまうではないか。

私は口いっぱいにウインナーを巻いた卵焼きを頬張った。

「うん、すごく美味しいよ。」

宙は何故か私を見て言った。

本当、やめて欲しいものだ。

「ちょーだ「だめ」」

「けちだなぁもう」

日和は呆れたように肩を竦めてみせた。

それを見兼ねてか架がお弁当箱を日和の前に差し出す。

「食うか?」

「………お言葉に甘えて」

まるで私達がずっと一緒にいたみたいな、そんな自然な流れが出来上がっている。

『幸せか…』

ふと声に出して笑った。

小学生の頃、幸せについて書くことがあった。

その時はよくわからなかったけど今ならわかる。

“これ”か

理屈なんかいらないんだ。

当たり前のようにとなりに誰かがいることが

お弁当を分け合える友だちがいることが

今ここに居れることが

幸せなんだ。

私は誰にも気付かれないように涙を流す。

みんなで食べるご飯は

あったかいなぁ。
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