天使と悪魔の子

放課後、皆で下校する。

近所の公園でぼーっとしているとなにやら懐かしい声が聞こえた。

ーミャア

『エル!!』

いち早く反応した私

だって彼、日和の家に泊まった日以来どこかへ行っていたの。

その後に続くように皆が追ってくる。

彼の前で屈んで撫でてやるが、数秒後、彼は走り出した。

全く、猫というものは勝手だ。

……彼は猫ではないのだが。

「やっぱあの猫美人だね!」

「面白そうだし追いかけてみようぜ!」

架と日和は私よりも早く駆け出した。

夕紀と宙とで顔を交互に見合って笑った。

「子供かよ」

思っていたことを真っ先に言ったのは意外にも夕紀だ。

『じゃあ私達も追いかけっこといこうか。』

「うん」

ふたりと一匹(?)のあとを追いかけて公園から抜けた。

その道は知っている。

エルが向かう先はそう

公演を出た道を右に曲がって真っ直ぐ

何故そこへ向かっているのか

考えもしなかった。

「伊織っっ!!!!!」

日和の悲鳴にも似た叫び声が赤い空を切り裂くように響く。

やっとの事で追いついた私は唖然とした。

あぁ

もうどうして

どうして

どうして……

「やぁ美影」

空に浮いている黒い羽根を持つ悪魔。

見覚えのある彼と、腕の中で泣いている女の子を見て全身が震えた。

『玲夜ぁあああああ"っっ』

その怒号にその場にいた全員の肩が震えた。

ただ一人を除いて…

玲夜はそう、笑った。

まるで虫けらを見るように私達を見下ろして。

「こいつを返して欲しければ、魔界へ来い。」

そういって彼は窓の中へ消えていく。

いや、彼等の移動手段を使い魔界へ行ったのだ。

私は追いかけようと鏡を探そうとした。

その時制服の裾を誰かに引っ張られた。

『ひ、より……』

彼女の目を見た瞬間、悟った。

怒りと悲しみ、不安の入り交じった恨みの篭もった目を。

そう、この世界は残酷だった。

悲しみは私を放っておいてはくれなかった。

「どうして」

彼女の口から絞り出された声は、弱々しい。

先程何を悟ったのかとききたいだろう。

そう

もう私達は、元の関係には戻れないのだ。


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