天使と悪魔の子

『なんだろ…』

「どうしたの?」

のらりくらり私はどこに泊まるか考えながら元の町に戻ってきた。

『こんなに、呆気ないんだな。』

悩んだ時、その際に課した思い、それには見合わないほど呆気なく出来事は起こる。

「呆気なくはないと思うよ。」

『どうして?』

「自分でやろうって決めなかったらここまでこれなかった。それまでの思いとかそういうのがあったからいい結果になった。」

そうか

なにか大切なものを忘れていたみたい。

『私、成長してるんだ。』

後にひしひしとやってくる達成感に思わず笑がこぼれた。

「お!美影っ」

『…架!夕紀くんも。』

「…」

「なんだ、エルも一緒なのか?可愛いなー。」

え?

と、エルの方を振り返るといつの間にか猫の姿になっていた。

ご丁寧に首輪まで付けてくれている。

「なにしてたんだ?」

『ちょっと用事があってね。架は?』

「俺は昨日夕紀の誕生日だし手料理でも振舞ってやろうと思ってさ。」

「…来る?」

驚いた

架も目をぱちぱちとしている。

私は大きく頷いた。

『うん!』

「なんかクリスマスパーティーの延長戦みたいだな。」

そっか、一昨日だったのか。

いろいろありすぎて、もう遠い日のように感じた。

ーミィ

「それにしてもよく懐いてるなぁ…」

流石になんだか不味い気がしてエルを抱き上げた。

『私も不思議なくらいだよ。』

エルもは喉をならして体を寄せてくる。

猫の姿だからいいけど、少し将来が心配だ。

いや、かなり長く生きてるわけだけど…。

「どうかした?」

『あ、ううん、なんでもない。』

それに着替えも欲しい。

取り敢えず夕紀くんの家にお邪魔して考えるか…。

「夕紀何食べたい?」

『…オムライス。』

「ぷっ、好きだなーオムライス。」

「…クリスマスといったらオムライスだろ。」

拗ねたように言う夕紀くんはなんだか可愛らしい。

オムライスが好きなんだ。

なんだか意外だ。

宙の話を聞くとあまり人間の食べ物の好みとかはなさそうなのに。

「…なに」

『結構普通だと思って。』

「ぷっ、なにそれ。」

架のツボに入ったのか、それを見て夕紀くんは面倒臭そうに歩いた。

こうしていると、本当に人間みたいだ。

架とはいつからの仲なんだろう。

エルの行動を見ている限り、彼らは記憶操作とかをできるらしいけど…。

「美影は大丈夫?」

『なにが?』

「オムライス」

『私も食べていいの?』

「あったりまえ、といってもこいつの家の食材なんだけどな。あ、夕飯とかもうあったりする?」

首を振ると架は頷いた。

架は料理ができるのか。

たしか日和は料理が苦手だったとか…。

なんだかふたりはいい夫婦になりそうだ。

日和が夫で架がお嫁さん。

変なことを想像しているとなんだか笑いそうになってしまった。

そんな私の顔をエルは神妙な面持ちで見ている。

「ここ」

夕紀くんが止まった場所は普通のマンション。

戸籍とか身分証明どうしてるんだろう?

なんて思いつつ後をついて行った。
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