初めてのズル休み
私の後輩社員にあたる瀬崎君から受け取った資料をチェックする。
私よりここでの経験が長いから安心して仕事を任せられる。
彼は一般の社員とは少し違う。
うちの社が所有している、いわるゆ実業団のバスケットボールチームの選手だ。
だから勤務時間は他の人間より短い。
それでも、その時間出来る限りのことをしようという彼の姿勢には好感が持てた。
部内の人間も皆、自然と応援したくなる。
そんな実直な青年だった。
「確認しました。ほぼこれでオーケーよ。ただ、付箋つけたところだけ修正しておいて」
瀬崎君の席へとファイルを持っていくと、驚いたように見上げて来た。
「分かりました、直しておきます。それにしても、早いですね。流石です」
「え?」
私は不思議に思って、彼を見返す。
「適当に見てるんじゃなくて、隅々まで見てる。そして、指摘される場所はいつでも的確で、自分の作った資料がワンランク上のものになった気がします。田中さん、異動して来てまだそんなに経っていないのに、もう仕事も完璧に覚えてるし」
改めて言われると照れてしまう。
「まあ、ただやらないと気が済まない性格だってだけのことよ」
結局私には、真面目に仕事することしか出来ない。
そんな自分に迷いもあったけど、今はそのすべてを否定しようとも思わない。
それもこれもきっと、全部、あの人に出会ったからだ。