初めてのズル休み



うちの社員がよく使う駅前の居酒屋に入る。
いかにも、という居酒屋で、焼き鳥の匂いと日本酒や焼酎、そしてビールの匂いが入り乱れている。

お座敷の席がちょうど空いていて、主任を真ん中に席に着いた。
男性社員が三人と女性が二人という構成だ。


「瀬崎、どうだ最近」

「ええ、いろいろと配慮くださっているおかげで、練習に打ち込めています」


体育会系の人ってこんな感じなのかな。これまでそんな人と関わることなんてなかったから、それがどんなものなのかはわからないけれど。


お酒がほどよく回って来ると、大概、社員のプライベートな話題に移る。


「それにしてもさ、瀬崎まだ、27、8だろ? それなのに、もう結婚してんだよな」

「本当に?」


まだまだ若者だと思っていたから、驚いてしまった。


「そうか、田中さんはまだ異動して来て間もないから知らないか。そうなんだよ、瀬崎は新婚でもないよな。れっきとした既婚者」

「結婚して何年なの?」


目の前にいる瀬崎君が急にオトナに見えるから不思議だ。


「えっと……、3年くらい、だと思います」

「じゃあ、24、5で結婚したってこと? 男の人にしたら早いね」


私、その頃何をしていただろう。


「男なら一番遊んでいたい年頃だろ? そんなに早く縛られたいと思うなんて、奇特な奴だなぁ」


もう一人の男性社員がしみじみと呟く。
本当に、その意見に同意だ。
皆が一斉に瀬崎君に視線を向ける。


< 35 / 56 >

この作品をシェア

pagetop