Cymbidium
紫蘭高校のグラウンドに、野球ボールがミットに収まる音が清々しく響く。

「明さん今日球走ってますねー。最近調子上がってきてますよ」

「おー。やっぱ今年の夏が最後だしな。気合い入るよ」

「ヤダ明さん、俺そういうの言われると泣けちゃう」

「泣いとけ泣いとけ(笑」

ブルペンでは明の球を翔が受けていた。
この二人のバッテリーは高校野球界では有名で、雑誌の取材が入ったり、球団のスカウトマンが見に来たりもする。

紫蘭高校は甲子園出場常連校で、昨年は準優勝の結果を納めた。今年は、エースの明、司令塔の翔をはじめ強豪揃いと言われる紫蘭ナイン。全国制覇の期待も大きい。

『新しいドリンクここ置いときまーす。暑くなってきてるんで水分補給こまめにしてくださいねー』

部活中は敏腕マネージャーと化す愛美が二人分のスポーツドリンクを持ってやってきた。
マネージャーとしての愛美は、監督や部員はもちろん、試合をする相手校からも評判がいい。

「ありがとなー。お前も熱中症気をつけろよ」

「お前のそんな優しそーーな声久しぶりに聞いたんだけどなに、差別?」

『明さん了解です! あ、そーだ6限で翔、気持ち良さそうに寝てましたよ』

「おーい愛美さーん、ガン無視やめて?あとサラっとチクるのもやめて?」

『練習して?かけるくん』

「だから無視すんなって」

「観客俺だけなのに漫才すんな笑 あと翔はあとで走り込みな」

「いや、起きてましたよ!記憶がないだけで!」

「嘘だよ(笑 愛美ありがとな」

『いえ!じゃあ全体練習始まる前に呼びに来ますね!』

「よろしく」

「ほら、やっぱ差別だわ」

『…頑張ってね翔』

「キャー愛美ちゃんツンデレ!」

『明さん、そいつの顔面にボール当てていいですよ』
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