struck symphony
エルニーニョ
陽音が、出発して ー






「あっ、もうすぐだっ、
ゆら、挨拶しよう、起きれる?」

「ん…」

「やっぱり眠いかぁ。朝起きて、挨拶しようね」



無防備な顔で すやすやと眠っている響の傍らで、
テレビからのカウントダウンとともに


新しい年を 迎えた。




「あぁ…。年が明けたぁ~…」




新しい年は、また どんな年になるだろう。



昨年は、ドラマチックな年だった。



生まれて初めての出来事。



現実は小説より奇なり というけれど、
あんな 衝撃すぎる素敵な出逢いは、
あり得ないほど…




“陽音さん、どうしてるかな…
どんな演奏をしてるかなぁ…
今頃は、何処にいるのだろう…”




頻繁にあった電話やメール、
時折 届いた絵葉書も
だんだんと少なくなり、いつしか、途絶えた。





そして、
新しい年の 訪れ…




陽音との出逢いから、
あまりにも 短期間での衝撃的すぎた日々に、




恵倫子は、
本当に 夢だったんじゃないか…
とさえ、思えてくるようになっていた…




なんだか…
衝撃の反動で
心に
ぽっかりと穴が空いた様な気分になってしまいそうだったが、

響の存在が、恵倫子を 強くした。


母は、強し





念願の夢を叶えようとしている、陽音。





恵倫子も、 “負けられないな…” と、


自分の役目、やるべきことは何なのかを
改めて 見つめ直し、


今までとおり、
響を立派に育てることに 真面目に取り組む と、
自分の心に 再確認した。







惑わされないように

そう、改めて思わされたことは、

陽音のお陰でも あるかもしれない。







ーー








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