私の日常が崩れる日
「ははっ……やはり中川君には分かっちゃうんだなぁ」

和田先生が昔の呼び方に戻った。

これはプライベートの合図だ。

僕と和田先生の関係はいわば師匠と弟子だ。

僕が精神科で働き始めたときに和田先生は病棟の師長だった。

研修医時代から患者さんとの接し方等を懇切丁寧に教えてくれた。

先生が居なければ今の僕はいないだろう。

「あの子ね…普通じゃないってのはなんとなく分かるでしょ?」

「目が生きてないし感情が豊かじゃない。端から見ればクールと言われるかもしれないけれど、彼女の目は患者の目と一緒です」

授業中も職員室前にいたときも目が少し虚ろだった。

「家庭環境は母親と兄との3人暮らし。兄は貴方の病院で働いている医者よ」

「黒川美都ですか?」

「あら、知っているの?」

「彼は病棟で有名な医者ですから」

彼は外科に就職して6か月足らずで職員内で優秀すぎると広まった。

2年目で異例のERに異動となった。

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