私の日常が崩れる日

瑞希side

僕は授業が終わってから職員室に行った。

「中川先生、お疲れ様でした」

「あぁ、和田先生。いやー、初めてで緊張しましたよ」

「またまたぁー、先生に限って、そんなことはないでしょ」

和田先生は笑いながら言っているが、そんなわけない。

特にあの女の子……ちょっと気になる。

「和田先生、ちょっと伺ってもいいですか?」

「はい、なんでしょうか」

急に真剣な雰囲気になる。

「ここでは、ちょっと…」

今いる場所は職員室内のフリースペースだから誰でも聞ける状況になる。

それは出来るだけ避けたい。

「あぁ……それじゃ、ちょっと部屋の鍵を取ってくるので前で待っててください。直ぐに行きます」

和田先生は察してくれたようで助かった。

「分かりました。ありがとうございます」

職員室を出ると彼女がいた。

黒川美夜だ。

「これからまた授業ですか?」

僕が目を合わせると彼女は表情すら変えないで頷いた。

「中川先生、お待たせしました。じゃ、行きましょうか」

「あっ、はい。黒川さん、また次回の授業でお会いしましょう」

「失礼します」

彼女は律儀に15度でお辞儀をしてその場を去っていった。

和田先生は部屋を開けてくれた。

「先生、黒川さんとお知り合いですか?」

和田先生は少し驚いたような雰囲気を醸し出している。

「彼女だけ初めて僕の授業を真面目に聞いてくれたんですよ」

そう…眠っても構わないって言ったのに眠らなかったのは彼女が初めてだ。

「そうですか…それでお話というのは?」

和田先生が本題を切り出してくれて助かった。

「黒川美夜ですけど、彼女は何を抱えているのですか?」

「えっ……」

和田先生は目を見開いている。

「先生は気付いているでしょ?彼女の目は生きてない」

そう……彼女の目は死んでいた。

輝いていないのだ。

あのような目をする患者は何回か診たことがある。

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