fantasista 2
戸崎は疲れた顔であたしを見て笑った。
少し切ない笑顔だった。
そんな戸崎に笑顔でお疲れと言う。
負け試合だったけど、剛君が目立っていたけど、あたしの瞳は戸崎に吸い寄せられていた。
全力でボールを追いかける戸崎に、狂わされて仕方ないんだ。
「やべぇ、またスランプだな」
戸崎は困ったように言って、ソファーにどかっと座る。
ボディーソープの香りと湿布の香りが漂ってきた。
「最後のほう、疲労で足が動かなくなった。
それに比べてあいつは……」
「剛君と比べちゃいけないよ」
あたしは戸崎に告げる。
「剛君は戸崎みたいなシュートは打てないし、あたしは戸崎だけ見てる」
戸崎は一瞬、泣きそうな顔であたしを見た。
そんな戸崎に抱きつきたくなる。
大丈夫だよ、と言って。
でも……
「お前、いつからそんな生温い女になったのかよ」
奴はあたしに言う。
「昔は練習しろ、女の尻ばかり追いかけるなって俺にキレてばかりいただろ」
「それはあんたが悪い」
「あー!今回だって山形抱いたら勝てたかもしれねぇのに!」
「だから、いいって言ってるでしょ!?」