愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
しばし彼女の笑いが収まるまでビールをチビチビ飲んで待っていると、やっと落ち着いたのか大きく息を吐き、一度喉を潤おすと、また話し出した。

「それでテンパる菜穂美より先にあの副社長が頭を下げたんでしょ? あーあ、そんなゲームの世界の出来事、ぜひ目の当たりにしたかった。……ねぇ、菜穂美。うちの会社に取引先の人が来た際、また豪快にやらかしてよ」


「なっ……! バッカじゃないの!? そんなことするわけないでしょ!?」

ただでなくとも、あの日の失敗を今でも思い出すと胸が痛むというのに。二度と同じ失敗なんてしてなるものか!

ツンとはねのけ、グラスに残っていたビールを一気に飲み干して、近くにいた店員さんにおかわりを注文した。

「えぇ~、ケチ」

「ケチでけっこう!」

箸を手に料理をパクパクと口に運んでいく。


「まぁ、きっと菜穂美のことだから、こっちが頼まなくても色々やらかしてくれるかもしれないけど」

ニヤリと笑いながら言ってきた紗枝に、口にしていたものを吹き出してしまいそうになり、慌てて紙ナプキンで口元を押さえた。
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