愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
私なんて副社長の恋愛対象ではないってわかっていた。もっと似合う人がいると。それでも気持ちは止められなくて、ますます副社長が好きになるばかりで。


私……キスされたくらいでなに自惚れちゃっていたんだろう。ちょっと優しい言葉をかけられたからって、彼も同じ気持ちでいてくれるのかもしれないと思ったのかな。


ううん、副社長が悪い。あんなキスして私を好きな素振りを見せて。さっきだって私に嫌われたかと思ったなんて、意味深なことを言っていたじゃない。

それなのに彼女がいたなんて――。


麻生さんより最低だ。……それなのにどうしてかな? 怒りなんて沸き起こってこない。ただ悲しくて苦しい。


次第に息は上がってしまい、歩道の一角で立ち止まり大きく肩を上下させながら呼吸を落ち着かせていく。


好きになる前から覚悟していたじゃない。最後に傷つくのは自分かもしれないって。それがただ現実になってしまっただけ。

それなのに、胸が避けてしまうんじゃないかと思うほど苦しいのはなぜだろう。

涙が零れ落ち、その場に崩れ落ちていく。

悲しくて苦しくて。人目も気にせず声を上げて泣いてしまった。
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