ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

そう言うと、目じりにシワを作り満足そうに微笑む表情も大好きだと新しく発見をした。


だが、まだ好きだとか愛してるとか言っていないし、言われてもいない。


「顔に大好きって書いてあるぞ」


ずるい男は、そう言って意地悪く笑った。


「気のせいよ」


ベーっと舌を出し、素直になれないのはずるい男のせいだ。


そんな姿の彼女を見て苦笑した蒼斗は


「まだ、信じられないか」


悲しい表情をしボソッと呟いた後、立ち上がりスーツの上着を羽織った蒼斗の顔に悲しい表情は消えていた。


「…気をつけて行って来いよ。帰りは迎えに行くから会社で待ってろ」


見送ろうと立ち上がりかけた美姫の肩に手を添え、そのまま座らせた蒼斗は、少し膨らんだお腹も撫で微笑んだ。


「行ってくる…」


「行ってらっしゃい」


美姫の満面の笑みに、また目じりにシワを作り微笑んでいた。


スリルと背徳を楽しんでいた男からかけ離れ、今は、美姫を甘やかし、いろいろな表情を見せてくれる。


気を許してくれている証拠だ。


それが嬉しくて、美姫は朝から大胆になる。


「忘れ物」


蒼斗のスーツの襟を掴み引き寄せると、チュッと音を立て唇にキスをした。
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