ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
「そんなんじゃ、物足りなくて仕事にならない」
妖艷に微笑んだ蒼斗によって再び唇が重なるが、それは朝からするキスじゃなく、濃厚なキスで互いの唇を喰み甘い吐息さえも飲み込まれるほど激しく、仕掛けた美姫は、逆襲にあうとは思ってもいなかった。
頬をほんのり色づかせ、肩で息をする美姫に満足した男は、意地悪く笑い出て行こうとする。
その後ろ姿に息を切らしながら悪態をつく美姫
「朝からこんなキスするなんて信じられない。バカ…」
聞こえた声に、あはははと勝ち誇る男は背中越しに手を振り出て行った。
くやしい…のに、そんな蒼斗を更に好きだと思ってしまう。
重症だ…
お互いの気持ちは、通じ合っていると思う。
だが、曖昧に誤魔化さず先に好きだとか愛してるとか言った方が、負けの気がしてここまで来ると意地の張り合いだ。
どちらが先に口走るか…
でも、どうみても美姫が不利に見える。
蒼斗に抱きつき好きだと口走ってしまう姿が想像できるのだから…
そんな想像を振り払い、美姫は最後の仕事に向かった。
引き継ぎもなく、いつも通りに訪れた客に笑みを浮かべ対応して就業時間が終わった。