ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

その顔って…


そんなに酷い顔をしているの?


雑貨屋のウィンドウに映る自分の顔を見つけた。


顔を赤らめ、しまりのない緩んだ表情をしている。


その顔は、まるで愛しい彼と甘い一夜を過ごした後の骨抜きにされた女のようだった。


「もう、なんて顔してるの⁈」


頬を叩いても、緩んだ表情は元に戻らない。


抱かれた肩にまだ残る男の感触…


側頭部にキスされた感触…


美姫を蕩けさせた峯岸の声が耳に残っている。


どうしよう…


なんとかして来いって…


無理だよ。


こんな気持ちのまま浜田に会えないと、美姫は元来た道を帰ろうとして、鞄からスマホを出し浜田に電話をかけた。


2コールで向こうの声が聞こえ、言い訳を考えていなかった美姫の心臓は急に速く鳴る。


『美姫…どうした?どこら辺まで来た?迎えに行こうか?』


浜田の優しい声と気遣いに、罪悪感で涙が溢れてくる。


ごめんなさい…


ごめんなさい。


本当にごめんなさい。


こんな優しい彼氏を裏切って、私はなんてずるい女なのだろう…


峯岸に心が揺らぎ、でも、浜田にも心がある。


どちらも好きなんて…


都合が良すぎる。


会えないよ…
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