ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
「途中から体調が悪くなってきて、…」
『「大丈夫か?」』
スマホの向こうから聞こえる声とは別の所からも聞こえる浜田の声に振り向いた。
そこに立つ浜田は、少し息がキレてる。
「本当だ。顔が少し赤い気がする」
覗くように顔を見つめてくる浜田。
「目も潤んで、熱が出てきた?」
そう言って、おでこに手のひらを当てる浜田の手を咄嗟に払っていた。
「熱はないから…」
美姫の動作に驚く浜田の表情が曇り、何か言いたげに謝る。
「…ごめん」
払われた手をグッと握る浜田に、美姫は悪い事をしたと男に笑みを作った。
「ううん…私の方こそごめんなさい…浜田さんに余計な心配をかけたくなくて…ごめんなさい」
「彼氏なんだから心配させてよ」
浜田の優しい言葉に、心が傷む。
ズキ、ズキと罪悪感に苛まれる。
「送ってく」
「…1人で大丈夫です」
「普段、なかなか会えないんだから、彼氏らしい事してあげたいんだ」
照れ臭そうに笑う浜田を見て、嘘をついた後ろめたさに苦しくなる。
だから、つい…
「…熱もないし、アルコールさえ飲まなかったら大丈夫だと思うのでお店に戻りましょう」