ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
あれは浜田なりの忠告だったのだ…
わかっている…
自分が今からしなければいけない事がなんなのか、わかっている。
鞄の中にある一枚の名刺とスマホを取り出し、書かれている携帯の番号を一つ一つ丁寧に押すが、11文字の後のコールボタンがなかなか押せない。
ドキドキと緊張し、指が震える。
明るく照らしていた画面が、スッと真っ暗になるまで見つめ続けていた。
何を迷う事があるのだろう⁈
簡単な事なのに…
ボタンを押せない自分を笑わぜずにはいられない。
バカな私…
答えはこんなに簡単に出てきたのに、なぜ心を無視しているのだろう。
浜田を選んで幸せになれる保証がある訳じゃない。
それなら、悔いのないように自分の意思に素直になる方が後で後悔するよりいい。
そう思った瞬間、簡単にコールボタンを押せた。
数コール目で、電話の向こうから愛しい男の声で名を呼ばれる。
『美姫』
名前を呼ばれるだけで、涙が溢れてくる。
「…峯岸さん会いたいの」
過ちだとわかっている。
だけど、もう止められない。
『今、どこだ?』
「私のアパート」
『今から行くから住所を教えろ』