ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

住所を告げ、峯岸が来るまで美姫は落ち着かない。


会いたいと告げたものの、まさか峯岸が家まで来るとは思ってもいなかったのだ。


玄関先からワンルームの部屋を行ったり来たりして落ち着かない美姫は部屋の中を片付け始め、部屋の隅にある姿見に映った自分がまだ着替えていない事に気がついた。


どうしよう…


着替えるべきかしら?


峯岸が部屋に上がるとは限らない。


悩んだ末に、美姫は部屋の中で着るようなルームウエアに着替え、着ていたブラウスを脱衣所にある洗濯機の中に入れた。


すると、普段なら気にしないものに目が行ってしまった。


ペアの歯ブラシ


そして、浜田のひげ剃りにヘアーリキッド


それらを見て心がチクンと痛みながら、洗面台の戸棚の中にしまった。


胸の奥に忘れていた淡い思い出の人に再び出会い、手を伸ばせば届く人になっていた。


だが、何度も過去の淡い恋だと言い聞かせ心を閉じても、好きだとも言わずに美姫の心を翻弄し魅惑的に誘惑するずるい男に諍えなかった。


今から浜田を裏切る


いや、もう裏切っていた。


峯岸のキスを拒めなかった時点で…


それとも再会し心が嬉しく踊った時点で…
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